指圧とは

About Shiatsu

指圧とは?

浪越 徳冶郎 先生(右) パーマー 博士(中央) 浪越 徹 先生(左)

指圧は、日本生まれの日本独特の手技療法で、そのルーツは神話時代まで遡る事が出来ます。指圧の原点は『手当』にあり、現在の指圧療法は浪越徳冶郎先生によって体系付けられました。

日本では厚生省(当時)によって昭和30年代に法制化され、公認手技療法のひとつとして現在に至っています

又、最近では代替療法として世界保健機構(WHO)にも承認され、日本だけでなく西洋社会を中心に世界中で注目を浴びています。

指圧の定義

『指圧法とは、徒手で母指、手掌等を用い体表の一定部位を押圧して生体の変調を矯正し、健康の維持増進をはかり、または特定の疾病治癒に寄与する施術である。』

~昭和32年12月厚生省 (現厚生労働省)医務局医事課発行『指圧の理論と実技』より

指圧の特徴

指圧の特徴は、施術者が指と手掌のみを使って施術するところにあります。道具を使ったり、ひじ又はひざなどで強圧することはありません。

昔から治療することを『手当』と言うとおり、手は優れた感覚器であり、その表面にはごく微量の磁気・電気を帯びてからだに良い影響を与えると考えられています。又、指と手掌のみで、解剖生理学的に定められた指圧のツボを圧す事で、皮膚、筋肉、骨格、神経、血液循環、内分泌、内臓などの身体機能を刺激又は調整し、人間のからだにおのずから備わっている自然治癒力を引き出すことが 出来ます。

尚、指圧のツボは指圧独特のものであり、中国伝来の針灸の経穴とは全く違うものです。 指圧の神髄は『診断即治療』にあります。西洋医学においては、又は東洋医学においても、治療の為には前の診断が欠かせませんが、指圧療法においては必ずしも事前の診断は必要ではありません。

例えば、病名のわからないような症状や、診断的に異常が無くてもなんとなく体調が優れないときでも、経験を積んだ施術者から指圧を受けるだけで、からだの機能が正常な状態に近づき、免疫力が高まることによって自然に正常な状態(即ち健康な状態)に戻っていくことが出来るのです。

つまり、指圧療法では診断によって病気・健康の別を分けるのではなく、どのような時でも常にからだの状態を正常な状態に近づけることにより病 気から身を守り健康を保持することを目的とした医療なのです。

指圧の創始者 浪越 徳冶郎

浪越 徳冶郎 先生(右)
池永 清(左)

浪越 徳冶郎(なみこし とくじろう 1905-2000)

7歳のとき、北海道の無医村に移住。多発性関節リウマチの母の痛みを和らげたいという一心から揉んだり擦ったりするうち、指で押すことで痛みが和らぐことを発見する。後にこの技術を指圧療法と名づけ創始者となる。

生涯現役指圧師として、現職総理大臣や、東京裁判のキーナン検事、マリリンモンローやモハメドアリなど各界の著名人を数多く指圧した。

東京に日本指圧専門学校を設立し、多くの指圧師を輩出する。経絡指圧の井沢正、ゼン指圧の増永静人、深層指圧の斉藤哲郎、タオ指圧の遠藤亮久、そしてツボ指圧の池永清などほとんどの応用指圧の創始者を門下生に持つ。
日本指圧協会初代会長。日本指圧専門学校初代理事長。

指圧療法の生い立ち

指圧療法の創始者である浪越徳冶郎先生は1905年11月3日四国香川県で生まれました。1912年、温暖な四国から厳冬の北海道へと移住した為に悪化した母マサのリウマチを少しでも和らげようと、全身を圧したり擦ったりしているうちに、身体のある点を指で圧すことにより症状が緩和される事がわかりました。時に浪越徳冶郎わずか7歳、母の苦しみを少しでも和らげようとした純粋な願いから誕生したのが今日の指圧療法です。母の病気を治したい一心で色々と工夫を重ね 、医学的知識を身につけ照らし合わせて、徐々に指圧療法は体系付けられていきました。尚、徳冶郎の母はその後88歳まで 健康に暮らしその生涯を終えております。
その後、更なる研究を重ねた徳冶郎は、自分で創始したこの手技療法を、『圧迫療法』のちに『指圧療法』と名付け、1925年に札幌に、1933年には東京にそれぞれ指圧治療院を開院させるとともに、1953年には、アメリカアイオワ州のパーマーカイロプラクティクス学校からの招聘をうけ長男・徹とともに渡米、初めて指圧を西洋社会に紹介しました。その後、徹は7年間にわたりアメリカに滞在し指圧療法の理論を解剖生理学に基づいて科学的に定義づける事に成功しました。
1940年には現在の日本指圧専門学校の前身である日本指圧学院が設立され、1955年に厚生省によって認可され免許制度が確立されました。現在では、指圧師となる為には3年約2200時間の履修と国家試験が法律によって定められています。現在、指圧の世界には色々な流派があるような感を受けますが、実はそのほとんどが浪越徳治郎先生の教え子、つまり日本指圧専門学校の卒業生によって創案された応用指圧であり、井沢正先生の始められた経絡指圧や増永静人先生の本が翻訳されて命名されたZEN指圧などが海外では人気です。
1955年、指圧療法は戦後初めて厚生省によって正式に認められましたが、この時はマッサージと共に按摩の一種として分類されました。そして1964年の法改正によって、ついに指圧は按摩から切り離され、西洋のマッサージ、中国の按摩、日本の指圧と、3つの手技療法がそれぞれ独立した形で法律に定められました。
今日では、あん摩マッサージ指圧師、はり師、灸師に関する法律で、これらの手技療法並び中国医療は一元的な規制を受けていますが、これにより日本独特の手技療法である指圧や西洋の手技療法であるマッサージまでが、中国医療のカテゴリーと一緒に扱われる要因ともなり、特に日本独特の文化である指圧を海外へ紹介する場合、日本文化と中国文化の差異を伝えるうえで弊害になっている場合があります。

カナダ指圧専門学校創設者 池永 清

池永 清(いけなが きよし1966- )

カナダを中心に活躍する日本の指圧師。東京都生まれ。カナダ指圧カレッジ理事長、カナダBC州指圧協会初代会長/現常任理事、日本指圧協会カナダ支部初代支部長、国際指圧インストラクター。
日本指圧専門学校にて指圧の創始者浪越徳治郎に師事。1986年卒業後あんまマッサージ指圧師免許を取得。1996年カナダトロントに渡り、指圧アカデミーにて指圧師兼指圧教師を務めた後、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーに移動して、カナダ指圧カレッジ (Canadian College of Shiatsu Therapy)、カナダBC州指圧協会(Canadian Shiatsu Society of BC)を設立。日本指圧協会浪越徳冶郎会長(当時)から初代カナダ支部長に任命される。
以後、カナダ・バンクーバーを中心に指圧の普及に努め、彼の門下で養成された多数の指圧師は、指圧プラクターとしてカナダはもちろんアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア等でも活躍中。又、指圧のツボを解剖生理学的に解明したツボ指圧の提唱者でもある。著書・論文にTsubo Shiatsu、『指圧と海外普及/Shiatsu and its overseas definition』、『指圧師の“診・療”』等がある。